――演出という役割について教えてください
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演出・高木真司 |
まず、大友監督の絵コンテの意図に沿った映像を作るために、レイアウトや原画をチェックします。そして、キャラクターの演技・カメラワークを含めて、どのように映像化すれば良いか基本ラインを提案します。それを作画監督の外丸さん、橋本さん、テクニカルディレクターの松見さんやCGI監督の安藤さん、美術の木村さん、色彩設計の中内さん、コンポジットの佐藤さんなど、各セクションの人と相談して、一つ一つの要素を決定して行きます。アニメーションは、一つのカットについて様々な種類の表現手法があるので、どのようにすれば最適なのか、イメージをまとめるという感じでしょうか。もちろん画だけではなく、音とのシンクロも重要です。映像を作るために様々な要素についてチェックする仕事ということになります。
――大友さんの意図を汲むだけでなく、高木さんから逆に提案することは?
もちろんありますが、とにかく大友さんの要求は厳しいので(笑)。どちらかといえば、「これは無理だからこちらでどうでしょう?」といった代替感を出すことが多かったです。今までの経験から、このまま苦労して表現しても効果が薄いだろうというときにそうしました。逆に、ちょっと無理そうだが、やってみる価値があるなと感じたときは、なんとか頑張りましょうとなって、プランニングから考え直すことも多かったです。
――やってみたあとでこれはダメだった……というのはあるんですか?
特に大変そうな箇所については、複雑な処理ができるかどうか、カメラワークや3Dとの合成について、必ずラフな画で何度もテストしました。ですから、大きな破綻というのはありませんでした。手で背景やキャラクターの演技を描いている人に、全部描き直してくれとは言えません。だからカットを作画や美術の人に渡すときには、カメラワークや内容をできるだけ決め込んで、だいたいのプランができている状態でなくてはいけません。そうした点からも何度もテストを積み重ねていきます。アニメーション制作のような集団作業の中では、一番最初のプランニングがとても重要です。特にこの作品は1カット内での複雑な要素が多いので、そこに注力しました。
――高木さんの大友さんに対する印象は?
僕は、この作品の前にプロダクションI.Gで1本だけ、15秒くらいのテレビ局(TBS)のスポットを作る仕事で大友さんと一緒に仕事をしたことがあります。大友さんは「童夢」や「AKIRA」といった作品で漫画界に革命を起こした人で、さらにあの『AKIRA』というアニメを作ったすごい人だから、緊張していたんです。でも、実際に仕事をしてみると、とてもやりやすかった。要求は厳しいんですが、わかってくれるところはわかってくれるので。わかってくれないときもありますけれど(笑)。また、大友さんはとても鋭くて、日常的なところでも、人とはまったく違う視点から物事を指摘したりするんです。かと思うと、普通のときの普通さは尋常じゃなく普通で(笑)。そのギャップがユニークな方だと思います。 |