――様々な効果音を作り出す“フォーリー”という作業を、新たにアメリカでやったと聞きましたが。
ライブラリで所有している音よりも、フォーリーで新たに録ったほうが空気感、奥行き感が出ますから。1回データにしてCDなどのメディアにしてしまうと、どうしても質感が乏しくなってしまう。新鮮な音の感じがほしかったので。ちなみに、フォーリーだけで成り立っている音はありません。フォーリーで音の「素材」を録ったという感じです。フォーリーで録った音の素材を使用し、効果音を作り出しています。アメリカでやったのは、日本にはちゃんとしたフォーリー・ステージ(フォーリーを作るところ)がないからです。それに、フォーリー・アーティストも正直あまりよくありません。その割に値段も高い。
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手間がかかったスチーム城の音
しかし、素材は「秘密です」(百瀬氏) |
――もっとも気をつかった音は?
一番手間がかかったのはスチーム城ですが、演出的に気をつかったのと、作るのに苦労したのは別の話です。蒸気全般に関しては、実はあまり悩んでいません。気をつかったのは、衣擦れと足音ですね。人間の動きを表現している音には、必ずそこになんらかの感情や、その動きの理由がありますから。
――大友さんとの仕事はいかがでしたか?
僕が今まで仕事をして好きな監督は『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の北久保弘之監督と、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督、そして大友さんです。その3人に共通しているのは、ある一定の、自身が期待、イメージしていたモノを提示したとき、それを素直に受け入れて、そこから先は任せてくれることです。人が集まることで、ものがどう膨らんでいくかとういことをわかっているから、必要以上にエゴを押し付けず、うまくこちらから引っ張り出してくれる。そういうところで、大友さんはすごくやりやすかったですね。
――『スチームボーイ』が他の作品と違うというところは?
これは冗談と本気を半々で言っているのですが、台詞、音響効果、音楽、映像とのマッチング、スタッフのチームワーク、すべてを含めて、たぶん日本のアニメーションの音響演出で、15年は抜かされないだろうと思っています。それはもちろん、自分も頑張らなくてはいけないという意味も込めてなんですが。ただ、完成版を観たときは、正直、あと3日ほしかったなと思いました。
――3日もらって気になるところを直せたら、それで100点満点?
100点満点は絶対ありません。仕事に100点が出たら、それで終わりですからね。でも、もっとみんなが楽しめるものになったと思います。これだけのことをしたら、みんなが今よりも10〜20%作品を楽しめただろうなという方法論も見えているので、それができなかったのが残念でした。
――百瀬さんから見た『スチームボーイ』の見どころは?
日本映画にしては珍しく、何も考えずに、最初から最後まで勢いよく楽しめるところじゃないでしょうか。大友さんの作品だからと裏を考える人もいますが、大友さんご自身が言っているように、楽しんで見られる作品になっていると思います。音響に関しては、気にしないで見てほしいですね。素直に見て、感じてくれれば。音響のことが話題になっているのはありがたいですけど、本当は音響は裏方ですので、目立ってはいけなんいですよ。音響の仕組みがバレた時点で演出的には負けですからね。
――ありがとうございました。 |